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2024 Spring/Summer
アルチュール ランボー(Arthur Rimbaud 1854-1891)は19 世紀のフランスを代表する詩人であり、早熟な天才と称されました。
当時の革命を支持して支配的政治権力に反抗し、ブルジョワ道徳や因習、既成概念、既成の秩序に反抗し、ダダイズム、シュルレアリズムへの道を切り開きました。しかし彼は15 歳から20 歳のたった数年間で詩を放棄し、放浪生活の後、貿易商としてアフリカに住み、37 歳で死去します。
ランボーの37 年間の生涯は詩作者ではなく、紛れもなく世界大歩行者でした。しかも彼は「一個の芭蕉」となることを嫌い、英語を習得するためにロンドンに滞在した後、ジャワやバタヴィアにわたって2年を過ごし、いったん戻っては、今度はアレキサンドリアに赴いて、さらにアラビア半島南端の古都アデンに入ると、そこで某商会の店員などになっています。しかもそれからはエチオピアとの本格交易を企てて、しばしば隊商を引き連れてアフリカ奥地にさえ行きました。
ヨーロッパがパリ・コミューンにこそすべての世界があると思いこんでいたとき、はやくも「世界」はそれ以外にもゴマンとありうるのだと喝破していたランボーは福澤諭吉の「脱亜入欧」とはまったく逆の、どちらかといえば宮崎滔天に似て、「脱欧入亜」を企てたパリの青年だったのです。彼の代表作の一つである「イリュミナシオン」とは、その「入亜」に瞬くイルミネーションのことかもしれません。
ランボーの「脱欧入亜」的な行動と峻烈な人生に、アジア人である私は彼のそれに「輪廻」を感じ取りました。
Black Label ではヨーロッパの文化であるスリッパと円で「輪廻」を表しました。またスリッパは人間の生の「足跡」を表現すると同時に、履き物という、どちらかといえば汚いモノで「輪廻」を表現するという、ランボーの既成概念への反逆を表現しています。
White Label では、「輪廻」を具現化した円、19 世紀に流行した、ロマン主義、レッグ・オブ・マトンのようなボリュームのある袖や臀部にボリュームのあるデザイン、またアフリカの民族調のデザイン、ランボーの反逆精神を表す脱構築的なデザインなどを取り入れました。色に関しては、ランボー に捧げたエクトル ザズーのアルバム「サハラ・ブルー」に因んでブルーと、砂漠のサンドカラーを多用しています。